2013年6月4日火曜日

安部公房『砂の女』

安部公房『砂の女』を読みました。

これまでの人生で、わたしはたびたび安部公房を友人らにすすめられました。おすすめされた回数で言えば、村上春樹の方が多いのですが、しかし、安部公房に関しては「おまえはたぶん好きだろう」というトーンですすめられたので、わたしとしても、こいつは何かあるな、と思っておりました。

が、結局かれの作品を手に取ることなく、この年になり、そうして、ようやく重い腰を上げて、きのう、書店で『砂の女』を買ったのです。で、読んでみますと、もうほんと大好物。こういうの、大好き。理由もなく躊躇していた過去の自分に砂をかけてやりたい。

わたしはこれまで、鳥居みゆきが好きとか、ポピーザパフォーマーが好きとか、いろいろ周囲に言ってきました。あと、書く日記なども、そういうたぐいの、キ印なものが多い。そんなわたしを見て、なぜかれらが安部公房をすすめてきたのか、わかった気がいたします。かれの作品は、まあ、そういう不条理なタイプのものなのです。

おそらくこういうタイプの作品のひとつの源流は、L.キャロル『不思議の国のアリス』でありましょう。けど、ある種の古典落語や、先日ご紹介したチュツオーラの作品にも、そういうエッセンスは多分にある。きっと、不条理なユーモアというのは、何か、人間というものの根源的・普遍的な部分に源流を持つのでしょう。

ちなみに、『砂の女』はほんとに砂っぽい。砂丘にあいた穴の底にあるぼろい家が主な舞台で、そこでもとから住んでた女と罠にかけられて監禁された男が右往左往するのですが、もう、しゅうし砂砂砂です。家の中にいても部屋は砂だらけだし、口の中にも砂が入ってくるし、もう読んでるだけで口の中に砂が湧き出て、鼻から砂が出てきそう。とにかく、砂なのです。砂、砂、砂。ああ、もはや砂という語がゲシュタルト崩壊を起こしておる。

さて、この本ははやばやと読了してしまいましたので、今日、大学の購買でさっそく『壁』を買ってきて、もう読み始めました。これもなかなか、不条理でおもしろい。そして、やはり文章がうまい。もはや完全に安部公房フリークとなってしまっています。

不条理、理不尽、奇妙キテレツな話が好きという方は、ぜひお試しあれ。

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