2014年9月19日金曜日

読書の秋

何の発作かわかりませんが、ここ一ヶ月ほど、無性に活字への飢えが高まり、本ばかり読んでいました。活字を目で追うこと自体が快感となり、次から次へと貪り読んでおりました。今回はそんな乱読生活の中で特によかったものをご紹介しようと思います。ヒアウィーゴー!


橘 玲『残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法』
   『不愉快なことには理由がある』
   『バカが多いのには理由がある』
この人の書く内容を一言で表すなら、「身も蓋もない」です。現代社会のさまざまな問題を、遺伝と進化という観点からズバズバと切ってゆきます。おもしろい本ばかりなのですが、ただし、異なる本でも内容の重複が多いのでお気をつけを。
サイモン・シン『フェルマーの最終定理』
ここ二ヶ月で読んだ本の中でベスト。300年以上解かれなかったという有名なフェルマーの最終定理をめぐる数学の歴史を、素人にもわかりやすく書いてくれています。ピタゴラスからアンドリュー・ワイルズに至るまでの数学者群像劇でもあります。
アポストロス・ドキアディス『ペトロス伯父とゴールドバッハの予想』
これも数学の話ですが、こちらは小説。あたかも、「ワイルズがフェルマーの最終定理を証明できなかったらどうなっていたか」を描いたような内容。ですが、問題となるのはゴールドバッハの予想。実在の数学者が多数登場したり、ゲーデルの不完全性定理の登場という大事件が緊迫感を持って描かれていたり、非常に楽しい。ちなみに、ゴールドバッハの予想はいまだに証明されていません。
清水潔『桶川ストーカー殺人事件 遺言』
99年に埼玉県桶川市で起こったストーカー殺人事件についてのノンフィクション。清水記者が取材した異常な事件のことがスリリングな筆致で描かれています。ストーカーの怖さと同時に、事件を担当した埼玉県警上尾署の異常さについても生々しく描かれていて、背筋の寒くなる思いがします。
井川意高『熔ける 大王製紙前会長井川意高の懺悔録』
かつてニュースを賑わせた大王製紙前会長の手記。100億をカジノで失った人物の回顧録で、生い立ちからギャンブルにのめり込んで自滅するまでを描いています。懺悔録という割には誇らしげな筆致の部分もあり、逆にリアル。最初の2ページは圧巻なのでぜひ。
スーザン・ケイン『内向型人間の時代』
タイトルのままです。オタク、ネクラ、引っ込み思案、ネガティブなど、多くの蔑称がある内向型人間ですが、むしろ内向型だからこそいいのだという主張の本。 さまざまな文献や研究をフォローした上で書かれた読み応えのある内容となっています。内向型のよさをアメリカ人が訴えるというのはおもしろいことです。
岸田秀『ものぐさ精神分析』
メインとなるのは日本近代の精神分析。岸田によれば、日本は黒船来航によってトラウマを負い、精神分裂病になってしまったのだとか。この説に賛成するかどうかは別にして、よく言及される書物なので基礎知識として読んでおいて損はないと思います。やや厚い本ですが後半は単発的なエッセイなので、気になるところだけ拾い読みするというのでもいいと思います。
未上夕二『心中おサトリ申し上げます』
野性時代フロンティア文学賞受賞作。言葉を思い通り発せなくなった主人公が山でサトリという妖怪に出会い、奇妙な共同生活をしながら言葉を取り戻そうとする物語です。サトリは人間の心を読むことができる、少年の姿をした妖怪なのですが、このキャラが生意気なのにかわいくて秀逸です。
小林賢太郎『僕がコントや演劇のために考えていること』
ラーメンズの小林さんが書いた単発エッセイ形式の創作論。これを読むと、ラーメンズのブランディングがいかに意識的になされているかがわかります。まさに、ストイックという言葉がぴったり。クリエイターをめざしている方には非常に参考になるし、鼓舞される内容となっています。

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