2016年5月25日水曜日

とんでもない平和

今の日本はとんでもなく平和だと感じる。平和すぎて、驚いてしまう。

生まれてこの方、殺人や傷害のターゲットになったことがない。一度もない。目の前でその種の犯行がなされたこともない。友人や知人が被害にあったこともない(覚えている限りでは)。それどころか、窃盗の被害にあったこともないし、カツアゲをされたこともない。

夜道を一人で歩いていても、危険など感じたことはほとんどない。子供のころはコンビニの前などでたむろするお兄さんたちが怖かったが、今では恐怖を感じない。基本的に、暴力のない世界に生きていると言ってもよさそうだ。

もちろんテレビではかなりの頻度で殺人事件や傷害事件について報道されている。アイドルの女の子が刺されたとか、沖縄で若い女性が殺害されたとか、そういう話はある。それは痛ましい事件だし、心も痛む。だが、一億二千万人が生きている国で、そういう凶悪犯罪がゼロということはありえない。どうしても一定数はあるだろう。そして、一億二千万人が生きているにしては、その種の事件はきわめて少ない。

現在、私たちは、その種の事件の詳細な報道を目にし、義憤に駆られたり悲しんだり、再発防止のためにどうすればいいかを議論したりしている。この現状がよりよくなるように願っている。この現状は、望ましくないものだと考えている。しかしひょっとしたら、「この現状」こそ、とんでもなく平和なものかもしれないと感じる。凶悪で目を背けたくなるような犯罪が少なからず起こっているように見えるこの現状は、もしかしたら、ほとんど最良の部類に属する状況かもしれない。

十年後二十年後に日本の治安はどうなっているだろう。もしかしたら、二〇一〇年代を思い出し、「あのころは平和だった」としみじみ懐古することになるんじゃないか。

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